このページでは、イヤホンガイドでもお馴染み、花道会代表の塚田圭一が執筆した記事を掲載しています。
歌舞伎の旬の話題から、観るためにヒントなどが満載です。
過去の記事も御覧になれますので、ぜひご参考にしてください。
感性で楽しんで観る
2005年、ニューヨーク(「夏祭浪花鑑)、2007年、ニューヨーク(「法界坊」)、2008年、ベルリン(「夏祭浪花鑑」)――。
中村勘三郎率いる海外公演に3回随行した。
いずれも、串田和美演出である。どの公演も驚くほど観客の反応がよく、新聞等の劇評も素晴らしかった。
ニューヨークもベルリンも演劇が盛んなところで、観客が見慣れているということも大成功の要因だったと思う。もちろん、ニューヨークでは英語、ベルリンではドイツ語のイヤホン・ガイドはあったが、それにしても本当に楽しんで帰ってくれた。
最初から「歌舞伎は難解である」と構えていないから、“音楽が素晴らしかった”“立ち回りがよかった”“見得が見事だった”“出演者にポーッとした”と素直に感性で楽しんでいた。
「夏祭浪花鑑」は大坂の侠客・団七九郎兵衛を中心にした、義理と人情の物語である。ベルリンでは、序幕、住吉神社鳥居前の錦絵を見るような、団七、徳兵衛二人の美しい一つ一つの見得に拍手が起こり、二幕目との間に幕前で演奏される「だんじり囃子」の太鼓の音に、場内は熱狂的な雰囲気になっていった。
そして続く「泥沼」を使ったしゅうと・義平次殺しの場、終幕の捕手30人が総がかりとなる捕物の場と、終演に向かっていやが上にも盛り上がりを見せる舞台に、ドイツでは珍しいことだそうだが、全員スタンディングオベーション、拍手が鳴りやまず、3回もカーテンコールが行われた。
しかし、不思議なのは日本人は「歌舞伎」を観るとなると、義太夫や長唄やせりふの一言一句まで理解しようとすることである。楽しんで観ればいい。
「歌舞伎」はわが国の誇るべき伝統芸能であるが、ぜひ、気楽な気持ちで観に行くことをおすすめしたい。
2008/11/20 聖教新聞掲載