このページでは、イヤホンガイドでもお馴染み、花道会代表の塚田圭一が執筆した記事を掲載しています。
歌舞伎の旬の話題から、観るためにヒントなどが満載です。
過去の記事も御覧になれますので、ぜひご参考にしてください。
時代物、世話物、所作事、新作歌舞伎
現在、歌舞伎で上演されているお芝居を大別すると四つになります。
時代物、世話物、所作事、新作歌舞伎の四種類です。
歌舞伎は江戸時代、殊に元禄期(1688―1704年)の頃から盛んになり、数多くの作品が作られてきました。天下泰平が続き、商業も活気にあふれ、江戸が大都市に急成長した時代です。
上方も江戸も人々の活力が増し、文化・芸術が盛んになってきました。それから明治に至るまで、庶民の唯一の娯楽として隆盛を続けてきました。
現代でもその頃に書かれた作が多く上演されているわけですが、江戸時代から見た時代劇、つまり室町、鎌倉、平安等の時代を舞台にしたものを「時代物」といいます。
また、江戸時代の市井の出来事等を扱っている現代劇を「世話物」といっています。「所作事」は舞踊、または舞踊劇です。
これらはいずれも歌舞伎の組織の中に所属していた「狂言作者」と呼ばれる人たちの手によって作られてきました。
しかし、明治時代に入ると、外部の作家にも依頼するようになりました。
真山青果、岡本綺堂、宇野信夫、三島由紀夫と枚挙にいとまがありませんが、外部の頭脳を導入しはじめたわけです。
それを「新作歌舞伎」と称しています。新作歌舞伎は、したがって現代語で書かれていますので、難解でないところが見やすいと思います。
3月の歌舞伎座では、真山青果の「元禄忠臣蔵」が上演されます。
おなじみの忠臣蔵物ですが、膨大な資料をもとに、史実にしたがって書かれた力作で、全部で十編あるのですが、そのうちの六編が上演されます。
「歌舞伎座さよなら公演」と銘打っているだけあって超豪華配役です。
大石内蔵助だけを見ても松本幸四郎、市川團十郎、片岡仁左衛門と三人が各幕で代わります。
こんなところから歌舞伎に入ってみるのもよろしいのではないでしょうか。
2009/02/10 聖教新聞掲載