このページでは、イヤホンガイドでもお馴染み、花道会代表の塚田圭一が執筆した記事を掲載しています。
歌舞伎の旬の話題から、観るためにヒントなどが満載です。
過去の記事も御覧になれますので、ぜひご参考にしてください。
他に類を見ない化粧法、「隈取り」
歌舞伎の特徴として必ず挙げられるのが、「隈取り」という化粧法です。
歌舞伎の紹介記事とか、出版物の表紙とか、ポスターなどによく使われていますので、目にすることが多いと思います。
顔に紅色、藍色、褐色などの顔料を使って筋を描く、他に類を見ない化粧法です。
化粧は、本来は「化け装う」という意味ですから、俳優が与えられた役によって、良い男、良い女、悪人、商人、農民等々に扮するために施すものです。
実社会では考えられないことですが、それをあのようにデフォルメして役の性格を表現した俳優の創造力、表現力には、ただただ感心し、驚くばかりです。
仏像からヒントを得た、あるいは動脈、静脈を強調したなど、いろいろな説がありますが、最初に「隈取り」をして出演したのは、元禄十年(1697年)、初世市川團十郎と記録されています。
今は見慣れてしまっていますが、最初にあの顔で舞台に出た時は、かなりの勇気が必要だったことでしょう。観客もさぞ驚いたに違いありません。
それが今や歌舞伎の象徴のようになってしまっているのですから、たいしたものです。
以後、二世市川團十郎たちによって、代々、いろいろな隈が考案されてきています。
紅隈(若々しさ、強さ、勇気を表す)
藍隈(悪人、凄み、悪の権力者)
代赭隈(妖怪、鬼畜、化身)
この三種が基本ですが、他にも顔に蟹や、なまずなどを描く洒落た「戯隈」もあります。
かなりの種類ですが、中でも代表的なのは歌舞伎座5月大歌舞伎で上演される「暫」の主役・鎌倉権五郎景政の隈取りです。
「紅隈」の中でも、最も力強い「筋隈」と言われるものです。他の登場人物も「藍隈」「戯隈」をした役者が出てきます。「隈取り」を見るにはもってこいです。
2009/04 聖教新聞掲載